**「Well Being」**とは、心身ともに満たされて幸福を感じる状態のことを言います。そういった状態になるためには、身体的、精神的、社会的な繋がりのすべてが満たされる必要があると言われています。

「Well Being」という言葉が一気に世間に認知された背景には、働き方改革があります。働き方改革と相まって、コロナ禍を契機に在宅ワークやフレックスタイム制など多様な働き方が認められるようになったことで、時間や場所に縛られずに、その人らしい「Well Being」な働き方が出来るようになりました。

当院でも時代の流れに乗って、自由な働き方を推奨しています。子育て世代の職員は時短勤務で働いていますし、他社のリモートワークと兼業で働いていたり、地方に住んでいながら遠隔で業務に参加している職員もいます。また、昼休みを使ってジムに通って運動をしている職員がいたりもします。それぞれが自分の望む形で働けることで、それぞれの「Well Being」が満たされる状態をクリニック全体として目指しています。

当院が職員の「Well Being」を重視している理由は、職員が「Well Being」でいることが、そのまま患者・家族の「Well Being」を認め、推奨することに繋がると考えているからです。多くの患者に関わると、「酒や煙草をやって死ぬのであれば本望だ。」とういような人がいたり、何かしらに強いこだわりを持っていたり、どうしても考え方を変えられなかったり、と十人十色の価値観、それぞれの「Well Being」に出会います。それを本当の意味で認めて、寄り添い支えていくためには、まずは支える側の医療者自身が「Well Being」な状態でいることは大変重要なことだと確信しています。

また、**「Well Being」な状態は、前に述べた「グリーフ」**とは真逆な状態とも捉えることが出来ます。人生の最終段階において様々なことが出来なくなってグリーフに陥った際に、折り合いをつけながらそこから抜け出す作業がグリーフワークで、そこに寄り添うのがグリーフサポートでした。

グリーフから抜け出した後に、さらに目指す状態が「Well Being」なのではないかと、我々は考えています。訪問診療において様々な人と関わる中で「グリーフ」と「Well Being」を感じ取るセンサーを常に研ぎ澄ましながら、診療に当たるよう心がけていきたいと思っています。