**「ACP」とは、Advance Care Planningの略であり、人生の最終段階における医療・ケアについて前もって話し合いを行っておくことを言います。厚生労働省はACPを「人生会議」**と日本語に改めて周知、普及啓発を行っています。

終末期にさしかかった際に、多くの人が自分の意思を明確に示すことが出来なくなります。人生の最終段階において、どんな治療やケアを望むかは、事前に話し合っておかなければ伝わりません。その上で大事になってくるのは、胃瘻を造るか、造らないかなどといった断片的なことを決めるのではなく、その人の価値観や人生観、考え方などについて幅広く聞いていくことです。

日本人(特にお年寄り)には死に関する話を縁起が悪いこととして捉えており、話したがらない人がたくさんいます。そんな人であっても、どんな生き方をしてきたのか、何に誇りを持っていたのかなどの価値観や人生観を聞く中であれば、自然にどんな人生の締めくくり方をしたいかという死生観についても自然に話してくれるようになります。そういった話をしておくと、人生の最終段階でどのような状態を迎えたとしても、本人だったらこういった選択をするだろう、という**「本人の推定意思を尊重」**した治療・ケアを行うことが可能となりるのです。

また、身体の状態が死に向かって変化していく中で、その時々の気持ちも目まぐるしく変化していきます。そういった変化を捉えて治療・ケアに反映していくために、「人生会議」は1度きりで終わらせるのではなく、タイミングを見計らって繰り返し行って、その内容をアップデートしていく必要があります。

家族だけではこういった話をすることは難しいでしょう。そのため、医療者・介護者が介入する状況で積極的にそういった話をしていくことが重要です。その傍らに家族がいることで共通認識が出来上がっていけば、いざという時に意見が割れて困るという状況は避けることが出来ます。

現在、エンディングノートなどに自分の意思を記している高齢者の方は増えていますが、エンディングノート自体の存在を本人以外が知らなかったり、エンディングノートに書いてある内容を家族が受け入れられなかったりといったことが多くあります。そういった事態を避けるためにも、「人生会議」を行うことが当たり前の世の中になっていくことが望まれます。